2009年12月15日火曜日

男結び

結び方のマニアではない。僕はどちらかというと、苦手なほうだ。靴紐は最高のレベルみたいなやつ。新しい結び方を苦労して苦労して覚えたってすぐに忘れてしまいそうなタイプ。

じゃ、”男”がキーワードになるのか。女結びと比較してジェンダー論の展開か…そんな記事を書くつもりもない。

数週間も前のことだが、今年も山かんじきを作ってみた。越後の里山に必要なものとして今まで何度も何度もかんじきを作った地元のおじぃに教えてもらいながら、今年もあぶらちゃんの枝を切って火に炙って曲げてみた。曲げた直後、よい形に仕上げて即座に結ばなければならない。そのときは男結びの出番だ。越後の人たちを支えてきた男結び。それほど難しくはない。感動することなんかない。紐をう
まく結んでかんじきの型を固定する。おしまいだ。それだけだ。

でも、その結び方の中に何かが潜んでいる。里山の生活、いや人生の根
底がそこにある。忠実で、かつ簡潔だ。それに実用的だ。飾りなんかひとつもない。空想の世界じゃなく、現実だ。日々の山の仕事と田の仕事が細かく刻まれているおじぃの手をじっくりみながら、僕はそう思った。その瞬間に、本に書かれていること、大学で教えられていること、テレビで語られていること、すべては要らない飾りにしかみえなかった。その日に後何回もおじぃの素早い手は男結びについて物語ってくれた。言葉ひとつも口に出さずに…

0 件のコメント:

コメントを投稿